2016年2月20日土曜日






石原慎太郎氏が故・田中角栄氏本人の視点で一人称で綴る作品であり、
数ある「角栄本」の中でもインパクトという意味で本書が話題になっている理由がよくわかります。


文学としてこの著作を論じるつもりはありませんが、あえて生硬でワンパターンな隙だらけの文章が、読者のレベルに合わせて意識的に作られたものだとすると、それはそれで石原氏もたいしたものであり、多くの人が読んでみたがる「商品」に仕上げた幻冬舎はさすがだと思います。


当時、田中角栄氏の「金権政治」を真っ先に世に問い、角栄氏の政治人生、そして寿命すら縮めた張本人とも言える石原氏が、本書の「あとがき」で、「未曾有の天才」「天才の人生は、この国にとって実は掛け替えのないものだった」としています。


石原慎太郎氏と田中角栄氏の共通するもの。
それは、いまの日本国民にとって稀薄になりつつある「愛国心の強さ」です。


「天才」というタイトルに込められた石原氏の想い。
それは今年84歳を迎え、人生の晩秋を過ぎた石原氏が、「国を想うこころ」で虚心坦懐に今は亡き「田中角栄」と真正面から向き合い、導き出された不世出の政治家への賛辞なのだと感じました。